ラックスペースは、なぜアマゾンAWSやマイクロソフトAzureと戦えているのか

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ラックスペースとは?

ラックスペースという会社をご存じでしょうか? 日本ではサービスを提供していないこともあり、知名度は低いですが、米国のクラウド業界ではアマゾンのクラウドサービスAWS(Amazon Web Services)、マイクロソフトのMicrosoft Azureなどに次ぐ知名度を持つ企業です。とはいえ、売上規模でみれば、ラックスペースの売上規模は、アマゾンやマイクロソフトに比べれば、圧倒的に劣ります。

ラックスペースが提供しているサービスは、専用ホスティングとクラウドの大きく2つです。前者は、その名の通り顧客向けに専用のサーバを提供するモデル、そして後者は、共有されたサーバを利用するモデルであり、現在は後者が主役です。ただし、クラウドサービスとは、突き詰めれば、サーバ機能というインフラの提供です。インフラビジネスにおいてシェアを獲得するには、大規模なデータセンターに大量のサーバを導入し、1サーバあたりの人件費などのコストを抑え、徹底的に低価格で提供することが求められます。すなわち、規模の大きさが競争のうえでの重要な要素になるのです。こうした規模がモノをいうインフラビジネスでラックスペースがとった戦略を説明します。

ラックスペースの戦略

ラックスペースは、IaaS型クラウドサービスプロバイダーという業態を転換し、マネージドサービスを組み込んだクラウド、「Managed Cloud」(マネージドクラウド)という新サービスの提供へと軸足を移しました。パブリッククラウド、特にIaaS型クラウドサービスでは、Google、Amazonクラウド、Microsoft Azureが低価格競争には太刀打ちできないと考え、ラックスペース業態を変えたのです。

Managed Cloudは、設計構築運用保守付きのクラウドサービスです。設計構築運用保守付きのクラウドサービスは、GoogleやAmazonやMicrosoftのような巨大すぎるクラウドプロバイダーでは提供することができません。その代わり、AWSやAzurebの設計や構築や運用などを肩代わりしてくれるサードパーティがエコシステムとして存在します。ラックスペースは、今まで培ってきたOpenStack技術と設計構築運用保守を組み合わせて、他社には提供できないクラウドサービスを確立したわけです。自社が生きる道として巨大プレイヤーが入ってこられない分野を明確に選択しました。

ひと言コメント

ラックスペースは、NASAと共同でOpenStackのプロジェクトを立ち上げるなど、クラウド業界のなかでも存在感のある企業の1つでした。一方で同社はクラウド市場での生き残りを賭けて数年前から戦略を模索しつつ身売り先を探していたことも分かっており、2014年にはクラウドの低価格競争から脱するためにマネージドクラウドサービスへ注力することを発表しました。クラウドの低価格競争から脱出し新分野「Managed Cloud」で構築運用保守付きの付加価値クラウドへ方針転換、そして2014年9月にはいったん身売り先に関する交渉をすべて打ち切り、単独で生き残りを賭けて市場で戦うことを選択しています。しかし2016年8月26日、投資会社Apollo Global Managementに43億ドル(約4300億円)で買収されることを発表。同社はニューヨーク証券取引所に株式を公開する上場企業でしたが、買収によって非公開企業になっています。Amazonやマイクロソフトなどのハイパースケールなクラウドを展開する企業と正面から戦うのではなく、彼らの顧客を支援するビジネスを、自社の強みでもあるOpenStackを用いて行っていくという方向性です。こうした自社の位置づけや戦略の再定義をするために、非公開企業になるという選択をしたようです。ラックスペースは、Sierとして学ぶべき点の多い企業と思います。要チェック!!

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